8月1日 Dumbleとの出会い その1
 
    Dumbleの広告を紙面で発見
 1998年のある日の夕方、ローカルのリサイクル誌「リサイクラー」に目を走らせていたら『Dumble Modified Fender Bassman for Sale』というのがあり、興味を持ったので電話してみたら、とても紳士的な方が丁寧に説明してくれました。“とりあえず音を出してみたいので、いつ頃そちらへお伺いしていいですか”と聞いてみると“今からでもいいよ”というので、早速住所と名前、そして行き方を聞いてみました。名前は“アレキサンダー”……あれっ、もしかしてもしかするのかな!? “あのうっ、もしかしてダンブルさんですか!?”、“Yes 、I am”。なんとあのDumble本人が広告を出して改造アンプを売っていたのだっ! 信じがたい話ですが実話で、しかも1週間前から広告を出していたのに電話してきたのは僕だけだったそう。

Dumbleのお屋敷
 教えられた住所を頼りに、ワクワクしながらフリーウェイを飛ばしてEagle Rockという、Hollywoodからだと車で北東へ20分くらいの山側の古い街へ。日が暮れかかっている時間帯になり、車をパーキングしてその住所だと思われる方向に目を凝らしていたら、近所の人が出てきました。“誰を捜しているの!?”と聞くので住所を伝えると“ああ、そこの家だよ”と指さしたその先には、錆び付いてボロボロの鉄格子のゲートと、その中の庭らしきスペース。そこは雑草やらでかい木やらで荒れ果てた光景で、その先をよく見ると石らしきの階段があり、上の方に古い3階建ての家がやっと目に入ってきます。するとその玄関先からダンブルらしき人影がのそっと登場!
電灯がないからか、手に持ったフラッシュライトで足下を確認しながら階段を降りてきてそのゲート越しに“はーゆーでゅーいん!?”
 以前にDumbleとおつき合いがあったMike Fullerからその風貌は聞いてはいましたが、それはそれは大柄な方でした。日本にはあのサイズの人はほとんどいませんね。しかも、どでかいジャーマン・シェパード2匹がうろうろしているわで、こっちはよりテンションが上がってきているのを押さえるのが必死でした^^;
 その犬に噛まれないかと心配しながら、案内されるまま階段を上がると、たどり着いた玄関のドアはこれまたボロボロ……そのドアを開けて案内されたのは、かなり古い時代の木造のお屋敷。そして、昔リビングに使われていたと思われる暖炉があるその広い部屋は、彼の作業場になっており、物が所狭しと密集していました。すぐ目に付いたのは無造作に置かれたブラックフェイスのFender Ampのメタルシャーシーの山! 中身はからっぽです。


     
  8月10日 Dumbleとの出会い その2
 
    作業場での試奏
 ダンブル・アンプの中身を御覧になったことのある方ならご存じでしょう。かなりVintage Fenderのパーツが使われているのです。そのパーツは、綺麗にラベル分けされた小さなパーツ用の引き出しに収納されており、しかも本棚を利用して、これが床から天井まで山積みだったのでびっくり! しかもとても整理されていて、図書館の様に1つ1つが本棚の通路の様になっていました。ワーキングデスクの、彼が普段使っているであろうボロボロの椅子に案内されたので、そこに座りギターを取り出してその改造ベースマンを試してみること数分、彼が満足そうにニコニコしながら“どうだいっ!?”といいつつでーーんと横に仁王立ちしている。“It sounds Great”とかいいつつまた弾き続けているとしばらくして、“このアンプも聞いてみてくれ”とおもむろにジャックを抜き、ワーキングデスクの隅っこにあったアンプにプラグイン。聞くと、今製作している18ワットのアンプのプロトタイプだと。

終わりを知らない試奏
 またそれをしばらく弾いていると彼がのそのそと動きだしどこかへ行ってしまった。2階の方からガタガタと音が聞こえて、ミシミシと音をたてて上の階から降りてきた彼の手には、見たこともないアンプが……“これも弾いてみてくれよ”。完全に手作りのそのアンプも、クリーン・チャンネルのみの男らしーお姿^^。ブルージーに決めたのは言うまでも御座いません。ここぞとB B Kingしていたら、またまたニコニコしながらどこかへ。今度は部屋の奥の物置らしき所の中でガタガタゴトゴト……またもや手にはアンプを持っていて『これも鳴らしてみて』っと……(。。);
 結局、約4時間、夜中の11時過ぎまでDumble宅で拘束されてしまった^^

Dumbleの職人気質
 その改造Bassmanは僕が思っていた音とは違っていたので購入はしませんでしたが、彼のその紳士的な応対や、音への追求心には感銘を受けました。印象に残ったのは、“ビジネスには興味ない”というのと“Reihold Bognerは天才だ”と言った事。
 そうそう驚いたのは、当時偶然同じ週にDumble Overdrive Specialを購入する機会があったのでその事を告げると“そのシリアルは何!?”と聞くので言うと、そのオーナーの名前を即座に答えた事!
殆どのオーナーの名前はシリアルで即座に答えられると言っていました。
(当然、ファースト・オーナー、オーダーしてきた人の名前です)ちなみにそのアンプの現オーナーは元Judy and Maryというバンドの方と聞いています。
 ランドウ、スコヘンでさえも半永久的に待たされると言う Dumbleのお仕事。その完全無敵の職人気質に脱帽。 
     
  8月21日 Custom Ampのお話 その1
 
    カスタム・アンプ製作の原点
 都内のお店で“おやっ、このBognerは見たことないタイプだなっ”って思った経験をしたことはありませんか!? そうです、まさしくそれが改造アンプのラインの1つです。僕はこの10数年間に渡り、数々の改造マーシャルなどをL.A.から日本へ紹介してきましたが、この度Musette Japan設立に伴い、日本のギター・プレイヤー達の意見も取り入れつつ、より積極的に改造アンプ製作に力を注いでいこうと思っています。
 僕のカスタム・アンプ製作の原点は、1988年にMelroseにあったSoldanoと出会った事から始まります。当時、改造マーシャルを2台オーダーしてMike Soldanoにいくつかのリクエストをした所、素晴らしい物が出来上がってきて感動したのをよく覚えています。その後、お金をためてSLO100(Snake Skin Tolex)を購入しましたが、これもしばらくすると、数回Soldanoに改造のオーダーをしていました。なにか手を加えないと落ち着かない性格なのかも!?^^;(ボクは既製品には余り興味がないタイプ)。EL34を搭載したSLO100は素晴らしい音をしていましたが、ノイズの問題が解消されずにずいぶん悩んだ記憶があります。

Bognerのサウンドの幕開け
 ところで、L.A.のレコーディング・スタジオでは必ずと言っていいほど改造アンプが登場します。North Hollywoodにある機材レンタル専門店のAndy Brauer Rental Shopには10数台ある改造マーシャルの棚が備え付けられていて、そこから改造アンプが日々スタジオに届けられています。ちなみにReinhold Bognerは1989年にロスに改造マーシャルとボストンバック1つを持ってドイツから移住し、すぐに就いた職はAndyのショップでのリペアでした。そして、自分の改造マーシャルをレンタルした最初のクライアントが、当時デビュー・アルバムをレコーディングしにL.A.のスタジオにいたAlice In ChainのJerry Cantrellで、そのアルバム発表後のラジオでのオンエアーに伴い、Bognerの知名度はあっという間に広がって、当時のヘヴィ系のバンドはこぞってBognerにアンプをオーダーしてきたそう。なんというタイミング! Alice In Chainの1stの1曲目の頭、これこそがBognerの極太歪みサウンドの幕開けでした!
 ちなみに、Reinhold Bognerがドイツから持参したという改造プレキシ・マーシャルはEddie Van Halenに売ったそうです。Eddieが自分で作ったギター1本とキャッシュで買ったんです。Reinholdにその話を聞いた僕は、当然興奮気味に“そのギターは今どこにあるの!?”って聞いたんですが、なんと“ネックとボディー、バラして売ちゃった!”だって!!! Ohhhhhhhhh,Nooooooooooo !!



“ホワイト・ゴリラ”と名付けられた世界に1台のカスタムBogner Amp. 2000


#1 Cream Head Shellを違うアングルから。


Andy Brauerのショップのアンプの棚(1991年)
     
  8月21日 Custom Ampのお話 その2
 
    いつか再会してみたい改造Marshall
 今までBogner改造Marshallはシリアル#29まで製作してきたので、所有している方! 是非メールでご一報ください!(musette@pacificnet.net)背面に『Bogner Custom Amplification』というプレートがあり、アンプ内部にシリアルナンバー、『TAKA』と製作完了日付が手書きしてあります。(3台くらいは書いていないものやプレートなしものが存在しますが……)いつかまた再会してみたいです! Soldano/YamahaのBogner改造は2台のみ出荷。ご兄弟で購入されたと聞いています。

音への追求心の原動力
 僕自身、60年代からのギター・ミュージックに取り憑かれ、そのアンプのサウンドの重要性を実感し、1987年にL.A.に移住してからずっと『あの音』を探し求めてきました。The Beatles、Ritchie Blackmore、Eddie Van Halen、Jimmy Page、Steve Stevens、Frank Marino、Uli Roth、Michael Shenker、Eric Clapton、Jeff Beck、Yngwie Malmsteen……彼らのスタジオ&ライヴ・アルバムに収められた極上のギター・サウンドの数々。皆さんも“凄いっ!どうやってんだっ!?”と思ったことが一度はあるはず。それが僕の音への追求心の原動力となっています。

Bognerアンプ誕生までの道のり
 Reinhold Bognerがハンダゴテを手に、まるで歯医者さんの様に、アンプに顔をつっこむくらいの勢いでアンプと格闘し、僕はその横で爆音でギターを弾きながら“もうちょっとボトムが欲しい”とか注文を付けながらトーンを絞っていくという、愛と(^^)忍耐の作業を経てアンプは完成します。テスト期間も充分に1ヶ月はかけて出荷されます。これらの作業を通して生まれたアイディアを形にしたのがEcstasy -Classicであり、そして最強の極太歪みアンプ、Uberschallです。スペシャルでリクエストがあればCustom改造Ecstasyや改造Shivaも受け付けています。
話はいろいろそれましたが、また続きは書きますね!



今年の5月出荷の2台、“Brothers 2003”


Cream Head Shell、よく見るとアンプの後方にReinhold Bognerが!


     
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